国会会議録
 

平成29年6月8日- - 参議院厚生労働委員会会議録


 

○足立信也君 おはようございます。足立信也です。
 今朝、いろいろ考えておりまして、やっぱりこれは聞いておかなきゃいけないなと思いましたので、通告していませんけど、大臣、最初にお聞きしたいことです。
 去年の六月に大臣の肝煎りで保健医療二〇三五提言書、これ作られました。その中で、日本が世界の保健医療を牽引する、日本がグローバルなルールメーキングを主導する、世界をリードする厚生労働省と、そういうふうに書かれています。
 この主張は、これから先進国が日本を追って少子高齢社会を迎える、私もこのことについてはずっとそういう主張をしてまいりました。そのとおりだと思います。でも、今回の法案がそうなっているのかなと。今申し上げた三つのことが、その司令塔をつくるという法案だと思いますけど、この条文見ると、厚生労働審議官は、「厚生労働省の所掌事務に係る重要な政策に関する事務を総括整理する。」。でも、今回の医務技監は、「厚生労働省の所掌事務に係る技術(医学的知見を活用する必要があるものに限る。)を統理する。」と。物すごく狭いんじゃないかなと。
 保健医療二〇三五提言書には、保健医療政策について総合的なアドバイスを首相や厚生労働大臣に行う、保健医療政策に関する技術的、公衆衛生的な専門性、中立性を担保しつつ、大臣等の政治家をサポートする、任期は五年と書いてあるんですが、今回のこの医務技監、任期は何年で、そして、今の条文からいって総理にアドバイスするというようなことはとても読めないですが、その点はどうなんでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 二〇三五は大変前向きで新しい提言をたくさんしていただいたわけで、今御指摘をいただいたことにつきましても、そのとおり提言をしていただいたわけであります。
 ただ、私どもは、今回のことは、先ほど答弁を申し上げたように、様々な提言を受けて、そして様々な私自身の思いもあって今回の法改正に至っているわけでございますので、特に、任期が五年とか、そういう提言をされていますが、例えば、これ、チーフ・メディカル・オフィサーというのは、先ほど申し上げたように、イギリスの場合には百六十二年の歴史があって、今十六代目です。ということは十年に一人ぐらいでやっているということで、私は今のサリー・デービスにも、それって政権交代関係ないという意味ですかと言ったら、関係ないと言われました。つまり、科学は科学ですから、政権とは関係なく、政権交代とは関係なく科学的な知見をインプットしてもらうという立場でやっているということなので、そこは、ですから、いろいろな考え方があり得ると思いますが。
 今回、特に、医務技監について、これは次官級ポストということで、何か任期を特定の期間ということで決めているわけではなくて、これはむしろ、多分二〇三五で言っておられるのは、チーフ・メディカル・オフィサーのような外部の人を登用する場合のことをイメージされて言っておられるんではないかなというふうに思いますが、今回の場合には、言ってみればラインで、厚生労働省の中の方をということが基本ということで、いろんなことがあり得ると思いますが、外の人だって悪いとはどこにも書いていませんから、それはそれでありだと思いますけれども、そういうことであろうかというふうに思っています。
 先ほど申し上げたように、これはもう厚労省の考え方で国内を治め、保健医療に関して、そしてそのことが世界にも貢献できる、そういうことでありましたが、縦割りでばらばらになっていることが間々これまであったものを、この保健医療に関して統括できる立場を設けることが大事であり、そしてこれは、例えば、WHOに厚労省から行っている人間何人もいますが、終わりの方になると片道切符で行ってしまう人がいて、せっかくの日本人としての能力を国際機関で養っても、もう一回こちらに帰ってきて日本の全体の保健医療政策を統括する役割として国際的な経験を生かすというようなことも今、間々できないことがあって、もったいないなと。
 つまり、目標となるような、日本の保健医療政策全体を言ってみれば統括できるような立場になれるという言ってみれば思いを持ちながら、それぞれの持ち場で頑張ってもらって、またこちらに帰ってきてもらってやっていただくということが、また日本の国民のためにも、また世界への貢献もできるようになるんじゃないか、そんなことを考えているわけで、二〇三五からは大きな示唆はいただきましたが、私どもとしては、省内でも議論した上で今回のような形で提起をさせていただいているということでございます。

○足立信也君 提言書がかなり大きな大風呂敷だったのに比べると、今回の法案としてはしゅんとなっているという感じは否めません。
 次官級であって次官では決してない、でも医系技官のトップであることは間違いないので、今日はそこに一番近いであろうと思われる福島局長と鈴木局長と福田総括審議官に来ていただきました。
 資料ですが、この前、国会図書館にお願いして、医師、医療に関する主な宣言を調べていただいて、大部ですので、そのうちジュネーブ宣言と国際倫理綱領とマドリッド宣言を例示いたしました。世界医師会に関するものは多いわけですが、十月からは日本の横倉医師会長が世界医師会の会長になられると。
 そこで、私が持っている問題意識に対してお答えしていただきたいんです。それは、個人の、一人一人に合った医療の本来の、この宣言はほとんど患者個人に対して医師個人が責任を持つという趣旨ですね、その個人を尊重してやっていく姿勢と公衆衛生は私は違うと思っているんです。
 例えば、例ですけど、先月、マーガレット・チャン事務局長の後任の選挙ありました。馬場政務官、そちらへ行かれたんですね。大方はデビッド・ナバロさんがなるだろうと思っていましたが、多分イギリスのEU離脱が影響しているんだと思いますが、負けましたね。デビッド・ナバロさんは、私が政務官やっていたときの、新型インフルエンザのときに表敬訪問を受けました。日本は重症者も死亡者もアメリカに比べて二桁少ないと、この取組を高く評価されました。彼は、そのとき国連のインフルエンザ対策上級調整官、その後エボラ出血熱に対する上級調整官とやってきたわけですけど、そういうことが、これ公衆衛生的な考え方です。
 でも、日本はそのときに何の議論をしていたか。ワクチンのアジュバントはいいのか悪いのか、ワクチンの副反応はどうなんだ、そういう議論なんです。やっぱり個人に着目している。それも一つ正しいんです。医系技官、医師としては私は正しいと思うんだけど、公衆衛生は最大多数の幸福をやっぱり考えなきゃいけない。
 ということで、もう率直な意見をお伺いしたい。個人と向き合うことと最大多数の幸福を考えた場合に公衆衛生はどうあるべきか。
 例えば、BCG、結核ですね、日本は法定接種ですけど、アメリカは、その抑制効果は乏しいということで任意接種ですよ。日本は定期接種でありながら成人の結核の発症は先進国で一番多いわけでしょう。一体公衆衛生としてこれは正しいのかどうかということも含めて、今例示しましたけど、それにこだわる必要はないですが、福島局長、鈴木局長、福田総括審議官に、今の個人と公衆衛生と、どう考えるか。

○政府参考人(福島靖正君) まず、個人的な見解ということについては差し控えさせていただきたいと思いますけれども、まず、公衆衛生とは、ウィンスローの定義が一番有名でございますけれども、共同社会の努力を通じて疾病を予防し、生命を延長し、身体的、精神的健康と能率を向上させる科学であり技術であるというふうに定義をされております。同時に、ウィンスローは、全ての住民の生来の権利である健康と長寿を得させようとするためのものとも述べておるわけであります。また、我々国家公務員は憲法に従って仕事をしておりますけれども、憲法二十五条に規定する生存権は全ての国民に保障されているものであって、これを実現するために、国は、公衆衛生についても、その向上及び増進に努めなければならない、こういうふうにされておるわけでございます。
 公衆衛生は、確かに集団全体、社会に働きかけて集団全体の健康状態の向上を目指すものではありますけれども、その目指すところはやはり国民一人一人の健康のためであって、個人と向き合うことと最大多数の幸福を目指すことは本来は対立すべきものではないというふうに考えております。
 また、全体の健康水準を向上させるだけではなくて、その集団における構成員それぞれの健康格差、これをいかに小さくしていくのかということも重要な課題でありまして、地域や職業あるいは経済的な背景等によって健康格差が生じることがあるわけでありますけれども、これをいかに小さくしていくのか、そのための社会環境を整備していくこと、これが重要であると考えます。
 しかしながら、確かに、御指摘のように、公衆衛生の実際の場面においては個人と集団の利害とが相反する場合も生じます。そういう場合にどういうふうに対応していくかということが非常に重要な課題でございます。例えば、感染症対策において、一類感染症などに罹患した場合に、その感染症の蔓延を防ぐために法律の強制力をもって入院していただく場合もございますけれども、これはまさにその集団の、社会全体の安全、利益のために個人の権利を一定制限するというわけでありますけれども、この場合であっても、やはり人権尊重の観点から、その強制的な措置は必要最小限にとどめておるわけでありますし、また適切な説明を行うための配慮も行うと。
 ワクチンの接種、例えば麻疹のワクチンのように集団全体の免疫が必要なもの、九五%抗体を持っていなければ流行を阻止できませんので、こういうものについてのワクチン接種については、やはり一人一人の御理解を得て進めていく、高い接種率を確保する必要があると思います。ただ、その場合に、やはり不可避的なリスクとしてのいろいろな健康障害の問題もございます。そういうために予防接種法においては健康被害救済制度を設けたわけでありまして、そういう面で、それぞれ一人一人の問題とそれから集団の利益が相反するような場合であってもその調整をしてきておるわけでありますし、また、その集団全体の利益向上を目指すことが、最終的にはやはりお一人お一人の利益につながる、あるいは健康につながっていく、そういうことを公衆衛生は目指していると思っておりますので、こういう公衆衛生の考え方、理念というものを国民の皆様に対して丁寧に説明して、そして御理解いただく、そういう取組を私どもは地道に行っていきたいと、そういうふうに考えております。

○政府参考人(鈴木康裕君) 省としての見解は今御答弁あったとおりだと思いますが、公衆衛生に携わる者としての存念を述べさせていただきますと、最大多数の幸福、この場合、ヘルスマキシマイゼーションということになると思いますけれども、それと個人の権利、自由とのバランス、これは即座に絶対解を出すことはなかなか難しいと思いますけれども、我々は、その絶対解は行かないかもしれないけれども、ベストな調和に向けて不断の努力をすべきではないかというふうに思います。
 その際、公衆衛生ですけれども、私は、正確性それから妥当性を含めてデータを科学し、それを説得力のある形で国民や関係者の方々にお示しをして、その方々の行動を、例えば生活習慣病などがそうだと思いますけれども、変えていただくことを支援するということが非常に大事だというふうに思っております。
 私の所掌する保険局でございますけれども、医療サービスにつきましては、例えばアクセスを保障しながら質の担保をし、かつ効率的なサービス提供を図るという、この三つを鼎立させるということがやはり大事ではないかというふうに思います。

○政府参考人(福田祐典君) お答えいたします。
 省としての御意見は先ほどの健康局長の話のとおりかと思っておりますが、私、現在担当している仕事の観点から、少し御意見を述べさせていただきたいと思います。
 個人の幸福と最大多数の幸福、こちらにつきましては、両者のバランスを取りながら共に実現させていくことが非常に重要であるというふうに考えておりまして、しかしながら、これまで公衆衛生におきましても個人の幸福と最大多数の幸福がしばしば相反するものとして隘路に陥る、そういう形で考えざるを得ない状況もあったのではないかというふうに認識しております。しかしながら、近年の情報通信分野やライフサイエンス分野等での技術革新によりまして、その両立も可能になりつつあるというふうに認識をしてございます。
 例えば、ゲノム情報に基づくがんゲノム医療は、患者本人への治療の最適化だけではなく、予防でございますとか、先ほどお話ありましたエビデンスに基づく行動変容、説得力のある行動変容ですね、そういったものや、早期発見、早期支援、また、重症化予防に対する適切な対応、これも個人への対応とコミュニティーへの対応、様々あると思います。こういった取組というものを加速させることによりまして、社会全体の利益も共にもたらすことができるというふうに考えております。
 このような技術革新を進め、その成果を迅速かつ確実に国民に届けられるように取り組んでまいりたいと考えております。

○足立信也君 言いづらいこともいろいろあったかもしれませんけど、しっかり気持ちは受け止めたと思っています。
 先ほど大臣が技術革新と世界の公衆衛生ということもおっしゃられました。その二つというのは非常に難しい。特にWHOになると、やっぱり途上国の健康、保健というようなことが非常に大きくなってくる。それは圧倒的にその人数が多いからです、世界人口の中で。それと、日本が目指す世界、もうリーダーを目指すんだ、トップでやっていくんだ、次の政策は日本からやっていくんだということのこの兼ね合いですね、それが非常に大事だと私思います。
 もう時間がないので次の質問は行きませんけれども、それを是非冷静な判断で、個人に着目した医師としての目と、それから行政マンとしてのやっぱり最大多数の最大幸福、これを追求しながらやっていただきたい、そのことを申し上げたいと思います。
 今日は大臣に対して、五月三日にされました厚生労働省とアメリカの保健福祉省との協力覚書、これについて質問する予定でしたけれども、これは次回がまたあるような気もしておりますので、そのときに回したいと思います。
 率直な意見も聞けたと思います。ありがとうございました。


 

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