国会会議録
 

平成18年6月14日- - 反対討論


「健康保険法等の一部を改正する法律案」及び
「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」
に対する反対討論

民主党・新緑風会 足立信也

 民主党の足立信也です。私は会派を代表し、議題となりました2法案に反対する立場から討論を行います。

 昨日、理事会の合意もないまま、委員長から審議の終局が提案され、2法案は委員会で可決されました。審議時間は32時間、多くの国民から非難される中、強行採決された衆議院厚生労働委員会の審議時間にも及びませんでした。

  政省令事項は介護保険法改正案の232、障害者自立支援法の201、に比較しても、格段に多い440項目に上ります。その政省令事項に確たる方向性を示すためには、開かれた審議を国会の場で行う義務がわれわれ政治家にはあります。委員長の職権乱用に断固、抗議をいたします。

  高齢化が進展する一方で、厳しい財政状況の下、保健・医療・介護を効率的・安定的に国民に提供していくにはどのようにすればいいか、 これを内政上の最重要課題とするOECD加盟国は1昨年5月に保健大臣会合を開き、詳細なデータの収集と分析を行い、『世界の医療制度改革』という本を刊行致しました。

  川崎大臣は昨日の委員会でこの『世界の医療制度改革』は読んだ事がないと答弁されました。

  日本国民にとって最大の関心事である、この重要課題に世界がどのように立ち向かい、反省をし、どんなアクションプランを描いているか、関心すら示さないということは、由々しき自覚の欠如と断ぜざるを得ません。

  世界一の医療制度と評価され、世界一の健康寿命・平均寿命を達成した今日の日本。 これは医師を初めとする医療従事者と患者・家族との間で培われた、確かな信頼関係の中で成し遂げられたものです。 しかしながら、「最善の医療」を受けるのが難しいばかりか、生命すら脅かされるような危険が日常的に生じているのはなぜなのか、8割を超える国民が不満を抱く理由は何なのか――。

  今こそ、“必ず最善の医療が受けられるという安心”を国民の心に取り戻さなければなりません。 この問題の本質に手をつけないまま、財政的観点からのみ医療費を削ろうとする、これが「医療制度改革」に対する政府の姿勢であり、このままでは医療が守るべき国民の命を削ることになりかねません。 命の値段は削れないのです。

以下、主な反対の理由を申しあげます。  
  まず、健康保険法等の改正案についてです。

 推計を繰り返すたびに下方修正される医療費の将来推計値。政府の推計は1995年から99年まで5年間の、1人当たり医療費の伸びを前提に、人口構成の変化を考慮して推計したとされます。すなわち、高齢者は3.2%、一般は2.1%の伸びということです。 しかしながら、これには恣意的な補正が加えられ、高齢者0.9%、一般0.5%の水増しをしているのです。 まさに、偽装医療費推計値です。 この水増しがなければ、2025年度の医療給付費は47兆円となり、今回の医療給付費抑制策の成果と、ほぼ同額となります。 根拠のない作り話といわざるを得ません。

 現行の老人保健制度では、現役世代と高齢世代の費用負担の関係が不明確であること。 医療費の支払いを実施する市町村と、実際の費用を負担する保険者が全く別々であるため、財政運営の責任主体が不明確であること、等の批判があります。

 これを受けた今回の提案でも、現役世代は後期高齢者医療制度への支援金、前期高齢者医療費調整のための納付金、そして今後、実質的には十数年間も存続することとなった退職者医療制度への拠出金と、結局は三種類の負担金を支払うこととされ、老人保健法の基本的な構造は何ら変わっていません。

 さらに、今回の改正は現行の老人保健法に基づき、国及び地方公共団体がこれまで担ってきた住民の健康の保持・増進を目的とした保健事業を実施する責務を、こともあろうに削除してしまいました。

 高齢者医療制度の根幹に、医療費適正化計画の策定、実行、評価のプロセスが組み込まれていることが、ある意味、最大の問題点であると言えます。 新たな制度は高齢者にふさわしい医療を適切に提供し、それに要する費用は国民全体が支援するという理念。言い換えれば、高齢者医療を主な標的として、医療費の適正化、イコール医療費の抑制を図るための仕組みとして機能することになるのではないですか。

 高齢者にも原則として若年の現役並みの自己負担と、加えて療養病床における居住費・食費の自己負担を求めるなど、高齢者及び家庭を直撃する内容です。 日本銀行の「家計の金融資産に関する世論調査」によれば、2000年以降、20歳代から70歳代以上のすべての年代において貯蓄のない世帯が増加しております。高齢者もやはり、貯蓄を取り崩すことによって自らの生活と健康をやっと守っているのです。

 一人ひとりの状態に合わせ、自己決定に基づいたtailored medicineが世界共通の言葉となった今日、高齢者にふさわしいという言葉で、望む医療が受けられなくなることを、断じて容認するわけにはいきません。 次に医療法等の改正案についてです。  世界は医療費抑制の時代を超えて、評価と説明責任の時代です。医療に対する国民の不満の原因は、「情報の非対称」、「自己決定権が尊重されないこと」、「相談体制の不備」、「医療事故ならびに死亡原因の究明体制の不備」、そして「提供されている医療の質に対する、客観的評価体制の不備」にあります。

 この一つ一つを解決することが医療の質を高めることにつながり、「生命の尊厳」と「医療を受ける者の自己決定」の尊重につながります。 政府案は問題点の羅列に過ぎず、具体的な解決策が何一つありません。 国民の求めている医療は、説明する医療です、癒しの医療です。人が人を癒す医療には人材が必要です。日本の医療従事者は明らかに不足しています。

 医療従事者の責任感と使命感に基づいた、献身的な努力のみに頼ることはもう限界に達しています。決定的な崩壊を迎える前にわれわれは安心・納得・安全の医療を実現しなければなりません。

 医療・教育は社会全体にとって共通の財産、すなわち「社会的共通資本」です。われわれの財産である日本の医療が市場原理によって左右されてはなりません。

 今、日本は「希望格差社会」とも「健康格差社会」とも呼ばれています。その共通の財産を享受する機会に格差が生じているのです。  医療の世界において、結果の不平等を是認し、失敗しても再挑戦の機会があればよい、と強弁するわけにはいかないのです。医療における機会の不平等は多くの場合、再挑戦の機会を奪い、生命をも奪うことを意味します。取り戻すことができないのです。



 人為的に医療費を削減することによって、医療の質の低下を招き、人材の確保・離職の防止が困難になり、サービスや革新的医薬品の供給不足に陥ります。 これ以上、自己負担増加を加えれば健康格差を助長します、そして、健康格差に対する公的医療費は増大します。これは冒頭、引用しましたOECDの『世界の医療制度改革』に記された世界の経験則です。日本は、この轍を踏んではなりません。

 私達民主党・新緑風会は、われわれの財産である日本の医療をすべての国民が効率的に平等に分かち合える医療改革を目指します。 提出された政府案には断固、反対することを申し上げ、私の討論を終わります。

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