国会会議録
 

平成18年6月07日- - 厚生労働委員会



○委員長(山下英利君) 健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介申し上げます。
 日本医師会副会長の竹嶋康弘参考人でございます。
 熊本市立熊本市民病院神経内科部長の橋本洋一郎参考人でございます。
 健康保険組合連合会専務理事の対馬忠明参考人でございます。
 金沢大学経済学部教授の横山壽一参考人でございます。
 日本赤十字労働組合中央書記長の村山正栄参考人でございます。
 以上の五名の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変御多忙中のところ、当委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様からは忌憚のない御意見をお聞かせいただき、参考とさせていただきたいと存じておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 次に、議事の進め方でございますが、まず、参考人の皆様からお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人、質疑者ともに発言は着席のままで結構です。
 それでは、まず竹嶋参考人にお願いをいたします。竹嶋参考人。
○参考人(竹嶋康弘君) こんにちは。社団法人日本医師会副会長を務めております竹嶋康弘でございます。座らせてもらいます。
 本日は、医療保険制度、健康保険法及びその関連の法案につきまして、このような意見発表の機会を賜りましたことにまずもって厚く御礼申し上げます。
 私自身も現在、地域医療の現場で日々日常の診療に当たっておる医師の一人として、また私のような医師が日常診療の中でそれぞれ専門職能を生かして互いに連携し、救命救急医療や学校保健、産業医、各種検診等の公衆衛生事業を行っている職能集団としての医師会の立場から、今回の医療制度改革関連法案について意見を陳述させていただきます。
 ページ二をおめくりいただきたいんですが、まず私たち日本医師会の立場であります。
 我が国におきますすべての医師、医療機関を代表する組織として医療政策を提言する専門集団を任じております。かかりつけ医機能をまずは中心といたしまして、医療連携の推進により、各地域において良質かつ適切な医療の提供を目指す、そして国民皆保険、現物給付、フリーアクセスによりまして疾病の重症化を防ぐ、さらには効率的な医療提供体制を構築するべく努力をいたしております。
 その最前線でゲートキーパーとなります、なると考えておりますこのかかりつけ医でございますけれども、これはページ三、四に示しましたが、主として地域の診療所あるいは中小病院の医師であり、医療を取り巻く社会的活動にも積極的に参画し、医療、介護、福祉の諸問題を含めてこれに対応し、その患者さんにとって最良の解決策を直接的あるいは間接的に提供すべく努力する医師であると私たちはこれを定義し、その活動を積極的に進めておるところであります。
 全国に先駆けまして昨年その位置付けを明確にいたしました私ども傘下の医師会の中の福岡県医師会のかかりつけ医宣言及び「かかりつけ医の努め」を資料の三、四に紹介させていただいております。
 私たちはこのかかりつけ医を地域医療連携の円滑な推進のかなめとして重要視しております。まずこのことを強調させていただきたいと思います。  さて、このような私たち地域医療を担う現場の医師として、以下、今回の医療制度改革関連法案に対します日本医師会の考え方について述べさせていただきたいと存じます。
 資料五ページに示しましたように、基本的には、あるいは総論的には、本法案の趣旨は患者の立場から安全で質の良い医療を効率的、持続的に提供する体制を構築し、あわせて国民皆保険制度を将来とも堅実に維持することを図ったものと、そう理解いたしております。  しかしながら、医療の現場あるいは医療を提供する側から見ますと、公平公正で良質な医療の確保という点でなお様々な問題点があり、正にこの参議院の国会審議の中で慎重に御審議いただき、是非、附帯決議あるいは政省令等により運用面での解決あるいは改善を行っていただかなければならないと考えております。
 さて、このような公聴会に臨むときに私たちはいつも自問自答いたすことでございますが、それは、この私たちの日本の医療費は本当に高いのかどうか、その費やした国民医療費に対して対価はどうなのか、はたまた、国民の皆様方がこのことをよく理解しておられるんだろうかということであります。
 ページ六の図はいろいろなところで出されるグラフでございますが、GDP比での国際比較では、国民の医療に費やす費用は世界の中で実に十七位あるいは十八位であります。アメリカに次ぐ経済大国日本としてはどう見ても少ない数字でございます。一方、その少ない医療費で、日本は健康寿命、健康達成度の評価で、七ページにありますように世界の第一位の地位を確立、確保しております。
 なぜこれが達成され維持されているのか。それは、個々の日本国民の健康への努力はもちろんでございますが、言うまでもなく、いつでもだれでもどこででも早期に受診し、早期に治療を受け、ひいては、疾病の重症化を防ぎ得る国民皆保険制度と私たち医療従事者の献身的な働きもあると自負しております。
 一方、我が国の急速な高齢化の進行、医療技術の進歩により、年々国民医療費が上がっているのも事実であります。このような中で、この国民皆保険制度を守り、将来とも維持していくために、国は患者負担増でこれを補っていこうとしております。
 ページ八、十の図をごらんください。
 私たちがここで一つ国民医療費について指摘しておきたいのは、厚生労働省が示される国民医療費の将来推計値であります。毎回その予測値と実際の結果がこれほど大きく乖離しております。経済変動、様々な制度改革による努力があったにいたしましても、これは余りにも大きな差だと考えております。このことは医療費の将来高騰の危機感を募らせ、ひいては、公的給付を抑えて代わりに国民負担増、とりわけ、受療、医療を受ける際の患者の負担増を強いているとしか私どもには理解できないところがございます。
 私ども日本医師会でも、政策シンクタンクであります日医総研で試算させましたが、二〇二五年の厚生労働省の六十五兆円に対して、私どもは四十九兆円と試算しております。このような数字を根拠に今回の健保法一部改正法案の中でも、ページ九のように、混合診療を容認するような条文も実際に出てきております。
 どこに負担増が出ているかといいますと、ページ十でお分かりのように、まだまだ今事業主の負担が減っておりまして、その代わり国民の負担の方が増えてきております。平成十四年の健保法改正の際、附則第二条で、「医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持するものとする。」と明記してありました。患者負担増により受診の抑制をもたらし、疾病の重症化を起こさせない配慮と、所得の差によって国民の間に受療格差を生まないよう配慮したものであります。この附則の堅持を、国は国民との信義において堅持すべきであると考えます。
 ページ二十、二十一に参考として出させていただいておりますが、私たちは昨年末、医療関係者から成る国民医療推進会議により、これ以上の患者負担増を行わず、国民のだれもが安心して良質な医療を受けられる国民皆保険を守るため、国の諸政策を求めて、そのための諸政策を求めて全国署名活動を行い、一千七百万名を超える賛同の御署名をいただき、本国会が始まる前に、衆議院、参議院の各議長にその声を届けております。是非、この多くの国民の声を政治の場で、あるいは行政の場で反映していただきたく、この席で強くお願いを申し上げます。
 少し個別に入り、まとめに入らせていただきますが、まず医療法関連法案について申し上げますと、高齢者を中心といたします患者負担の大幅な引上げや療養病床の削減といった財政主導の政策は、国民の不安をあおって、その生活を脅かすばかりか、医療を提供する側にも混乱を招き、地域での医療の荒廃を招く危険性すらあると懸念をいたしております。
 また、他方、医療費適正化の名の下に保険外給付が拡大されようとしておりますが、これにつきましては、先ほども触れましたように、混合診療、保険給付と保険外給付の導入につながらないように、日本医師会といたしましてはその動向を注意深く見守っていく必要があろうと考えております。また、そういたします。
 次回の地域医療計画では、都道府県の裁量が拡大され、特に市町村にまで及んでいくことになりますが、このことにつきましても、地域での医療格差や負担の不平等が国民の中にもたらせないよう、国はその責任を逃れるようなことがあってはならないと考えます。
 公的医療機関の見直しと社会医療法人の創設、これに関しましては、ページ二十六に示しましたが、救急医療、へき地医療、周産期・小児医療等が後退することのないよう、そしてそれに付随して、ページ二十七に示しておりますように、医師や看護師等医療従事者の過疎化や偏在が助長されないような新たな仕掛けを考えていく必要があると考えます。
 さて、今喫緊の、私どもが医療現場で問題にしております今回の療養病床の再編に関してでございます。
 私どもの基本的な考え方といたしましては、この療養病床再編につきましては、皆さん御承知のように、本年四月の診療報酬・介護報酬改定では、将来の療養病床の削減に向けた処置が法案化されようとしておるわけでございますが、平成十八年度の診療報酬改定に間に合わせるべく、極めて短い期間で審議が行われ、法案化されるというところまで参ったわけであります。そのために、今回のこの改定によります社会的影響は、あるいは地域におけます影響は余りにも大きいものがあります。私どもといたしましては、早急なこの内容の見直しを提言したいと考えております。  そもそも介護保険三施設は、社会的入院の解消を目的として創設されたものですし、第三期介護保険事業計画の策定に当たりましては、介護療養型医療施設の廃止と診療報酬改定による療養病床再編計画が盛り込まれていません。
 このような流れの中で、改めて、今回また社会的入院の解消と称して、介護療養型医療施設の廃止、医療療養病床二十五万床の五〇%の患者さんを外に出すという、前回のまた制度設計から短期間でこの制度自体を根底から覆すような大幅見直しを医療機関側に迫るのは、余りにも唐突でございまして、論理性や計画性に乏しいと私どもは言わざるを得ません。この点につきましても、今後いろいろな面で私どもは要望をしていきたいと考えております。
 また、今回、診療報酬と介護報酬が同時改定されたにもかかわりませず、制度間の横断的、継続的な整合性がなく、社会的入院患者さんへの問題解決が何も示されていないということも問題だろうと考えております。この点につきましては、具体的な解決策を早急に検討していってほしいし、私どももそうしたいと考えております。
 最後に、今回の診療報酬改定で緊急に対応が必要な項目についてお話しします。
 これは、先ほど申しましたまず療養病床についてでございますが、医療密度が軽度に分類されております医療区分一につきまして、この点数が余りにも極端に低く、医療機関の経営が危機にさらされるおそれを私ども感じております。
 一つは人員基準でございますが、看護師の夜勤時間月七十二時間の制限、夜勤要員をこれでは最低二人確保、看護師比率の四〇%から七〇%への引上げ等々により、特別入院基本料を選択する病院や病棟を閉鎖する病院が、今私どもの、まだ不確かではございますが、大まかな試算では一〇%ほど出てくるんではないかと見込んでおります。その結果、地域医療現場では大きな混乱が起こってくるんではないかと極めて私どもは懸念しております。
 リハビリテーションに関しましても、疾病別体系への見直しによります要員の研修が求められますし、集団療法の廃止は、これもまた病院の経営に大きな影響を与えることになります。
 今回の改定内容は、改定刷新かと一度は見まがうこともございましたけれども、よくよく見ますといろいろな問題をこの中に擁しておりますので、私どもは、この法案につきましては、今後どういう形になるか分かりませんが、もし仮に通ったとしても、あとは政省令や附帯決議等々を参議院で付けていただいて、何とかこの内容をもう少し変えていっていただきたいと、そういうふうに考えております。
 それから、最後にもう一つ、準備期間をやはり与えてほしい。余りにも持っていく行き方が唐突であり拙速であるということをお訴え申し上げまして、私の意見陳述に代えさせていただきます。
 ありがとうございました。
○委員長(山下英利君) ありがとうございました。
 次に、橋本参考人にお願いをいたします。橋本参考人。
○参考人(橋本洋一郎君) 私のような市中病院の一医師にこのような機会を与えていただきまして、誠に、非常に感謝申し上げております。
 私は、脳卒中の専門医、あるいはリハビリテーションの専門医としまして、地域完結型の脳卒中診療体制というものを構築してまいりました。今般、法案で考えられておられます主要な事業ごとの医療連携体制の構築を都道府県ごとに行うことということになっておりまして、その辺が非常に熊本ではうまくいっているわけですが、今後、うまくいっている熊本でさえちょっと厳しい面もあるというお話をさせていただければと思います。  この中で、脳卒中対策ということを非常にテーマを置いてしゃべらしていただきます。  脳卒中といいますと救急の病気であるという一方で、実は皆さんが治るわけではない、救急で来られても。やはりリハビリテーションが非常に必要であると。そういう立場で、救急病院に勤めながら、私は、この地域リハビリテーションという考え方を基に地域でネットワーク構築をやってまいりました。
 それは、障害を持つ人々や高齢者が、住み慣れたところで、ここがポイントだと思います、住み慣れたところで、そこに住む人々とともに一生安全に、あるいは安心に生き生きとした生活が送れるよう、医療、保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々がリハビリテーションの立場から行う活動のすべてを地域リハビリテーションといいます。要介護状態の軽減、介護予防を図るということは非常にポイントになるかと思いますが、そのためには予防的なリハビリ、急性期・回復期のリハビリテーション、維持期のリハビリテーションを量的にも質的にも地域ごとに整備することが大きな課題と言われております。
 そのような中で、以前は脳卒中は急性期と慢性期と言われていましたが、やはり非常に重要なのが回復期のリハビリテーションというのが入ってきまして、急性期、回復期、維持期、この三つに分けて、それぞれのチームが急性期の高度な医療、例えば日本ですとCT、MRI、超音波検査、いろんな各種の検査がどこでもできるすばらしい国であります。また、治療法に関しても、世界の中で一番選択肢がある非常に恵まれた国であると。一方、その中で働く急性期病院の医師が非常に少ないと。手段があるのにそれを使う、ソフトといいますか、ドクターが少ないという問題があります。
 一方、熊本では回復期のリハビリテーションの病院が多いという、医療資源が豊富だったということから、急性期病院で十数年前から、二、三週間救急で診て、半分が実は在宅に行きます。半分がリハビリ病院に行きます。三か月程度リハビリをやりまして七割程度が在宅に行くということで、かなり在宅に行っているわけですけれども、重度障害の方というのはどうしても在宅に行けない。そのような場合に維持期の施設あるいは療養病床に行くというような形になっております。かつ、かかりつけ医と連携をして、地域全体で脳卒中の診療体制を築いてまいりました。
 十年前の熊本の急性期医療の問題点ということに関して述べさせていただきます。
 一つの施設に多くの脳卒中患者さんが集まらないために大きなチームが組めない、非常に零細な診療体制。脳卒中専門医、特に内科医が少ない。恐らく、全国的に見ますと、内科で脳卒中やっている方はほとんどいないというのが現状です。また、急性期から回復期まで同一施設で治療を行う病院完結型が多くて、急性期治療ベッドが不足する、救急車を断らざるを得ないということが出てまいりました。一方、脳卒中専門施設にリハ専門医がいない、リハスタッフが少ないことから十分な急性期リハが行われていない。以上の四点からして、救急部、集中治療部、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科、循環器内科などの多くの科を持ち、多数の脳卒中患者さんを二十四時間いつでも受け入れて高度先進医療ができる急性期脳卒中治療施設が少ないという問題点があり、その問題点をクリアするために地域のネットワーク化を図ってまいりました。
 現在、医療の高度・専門化、機能分化の中で、良質かつ適切な医療の提供、地域の医療資源の有効活用、診療報酬の面から、病診連携あるいは医療連携、地域ネットワーク化というのは必須になっているわけですけれども、私たちは、患者、家族とともに私たち医療従事者の満足度を向上しようということを考えながらネットワーク化を図りました。例えば、学校でいきますと、子供が元気になるためには学校の先生が元気じゃないといけない。患者さんが元気で良くなるためにはやはり私たち医療従事者が元気じゃないといけない。やはり、患者、家族とともに私たち医療従事者の満足度を向上するという目的の下にネットワーク化を図ってまいりました。
 一方、急性期病院の課題、幾つもあります。紹介率の向上、外来患者の抑制、在院日数の短縮、これはやらざるを得ないだろうと思って、一生懸命やってまいりました。また、病診連携の推進、救急医療の推進、高度先進医療、これは急性期病院ですから、やるのが当たり前と言われればそうです。一方、急性期病院も包括化ということが考えられておりまして、DPCの導入、トータルオーダリング、電子カルテなどのIT化、クリニカルパスの導入。今言っただけでも九つをやらないといけないということで、急性期病院の医師とナースが非常に消耗しているという現状がありまして、なぜ開業を皆がするのかとディスカッションがなされますが、それは急性期病院で皆消耗しているからであります。
 二〇〇四年の救急患者の受入れ数というのを表に示しておりますけれども、熊本で、熊本県は百八十五万の人口で、熊本市が六十七万であります。その中で、熊本市の中で脳外科と神経内科が二十四時間脳卒中を断らずに受け入れていますのは、大学病院を除きますと、済生会熊本病院、熊本赤十字病院、熊本医療センター、熊本市民病院。年間三千例ほどの脳卒中を受け入れています。それ以外の救急を含めますと、四つの病院で六千例ほどの急患を受け入れています。病院全体の救急車数を示しておりますけれども、大体五千から六千台を各病院が受け入れて、かつ自家用車で来られる急患、これを一万人から五万人と、非常に特定の病院に患者さんが集約してきているという現象がありまして、こういう中でベッド不足で救急車を断らざるを得ないという状況が来ております。
 一方、私は一般病院神経内科としても働いておりまして、頭痛、目まい、しびれなどの外来診療、脳卒中などの救急神経疾患の診療、あと、神経内科で非常に重要なのは難病ですね、難病。なかなか治せない病気も一杯ある。このような人たちをいかに治療していくか、ケアしていくか。さらに、最近増えています認知症も神経内科に来られますし、リハビリテーションもやらないといけない。
 そのような中で、私たちのやりたい、やらなければならないことを少ない人数でやるために、脳外科、神経内科で連携をやって、多科多職種によるチーム医療をやる。そのような中で、クリティカルパス、クリニカルパスを熊本で開発してまいりました。
 一方、かかりつけ医の先生やリハ専門病院との病診連携、すなわち地域の医療資源の有効活用という中で診療ネットワーク構築をやってまいりました。かかりつけ医の先生との前方連携、リハビリテーション専門病院との後方連携、専門病院同士との水平連携、このような中で少ない神経内科、脳外科医が自分たちの能力を発揮できるというところが今の熊本で構築できました。
 なぜそれができたかといいますと、次のページに示していますように、この急性期病院を取り囲むがごとく、赤で示しておりますような回復期のリハビリテーションを持つ病棟が非常に多いと。十四病院、十七病棟、七百十一床の回復期リハ病床がこの人口百万の医療圏の中であります。人口十万当たり五十床というのが一つの目標になっていますから、どちらかといいますとオーバー過ぎるぐらいある。そのようなリハビリテーション病院との連携によって急性期病院の医療が成り立ち、かつ回復期の病院で十分なリハビリを受けて在宅まで向かえると、非常にすばらしい連携構築ができております。
 このような中で、実はすべてが回復期で帰れないと申しましたけれども、維持期、この黒で書いています回復期の病床のないリハビリ機能を持った在宅までやるようなこのような病院が実は一番重要となっています。すなわち、維持期の施設がしっかりやってくれることによって回復期の病院が成り立つ、回復期の病院がしっかりやってくれることによって救急病院が成り立つという構図ですが、今回の診療報酬改定あるいは今後の医療制度改革の中で、療養型病床を中心に在宅あるいはリハビリをやっているこのような病院群の経営が成り立たなくなるということになりますと、ドミノ倒し的に救急医療が壊れていくのじゃないかなという非常に心配をいたしております。
 これは、次のページは「回復期リハ病棟のスタッフの一日のスケジュール」となっていますが、実は私の父親が二〇〇一年の五月三日、連休中に倒れました。四肢麻痺、昏睡、けいれん重積、人工呼吸器までつながれるような重症だったんですが、治療がうまくいきまして二十一日目にリハ病院に転院しました。そのような中で、朝から夕方まで非常に密度の濃いリハビリをしていただきまして、寝たきりでどうにもならない状況になるのかなと思っておりましたが、どうにか御飯が食べれて、正月はおうちで暮らすことができたと。非常に自分たちでつくってきた医療ネットワークが生かされたと思っております。
 熊本の脳卒中ネットワークといいますと救急病院のことがすぐ表に出るんですけれども、実は救急病院を支えていますリハビリテーション病院、これが非常に大きいということです。地域に密着して、かかりつけ医の先生とともに在宅医療、在宅で介入できる、このようなリハビリ病院が地域に一杯できて、在宅あるいは在宅に近い形で生活が送れるよう、地域リハの立場でネットワーク構築が必要かと思います。
 次に、全国的なお話をします。
 六か月ごとの回復期リハビリ病床数と積算数ということで、全国回復期リハビリ病棟連絡協議会の二〇〇五年の十月のデータをお示ししますが、平成十二年に回復期リハビリテーション病棟が認可されました。半年ごとの新規開設数とそれの積算数を示しておりますが、残念ながらここ一年から一年半で新規開設が非常に減りまして三万床で終わっていると。人口十万当たり五十床ですから、日本でいきますと六万床要ると。半分しかない。この半分が地域に均等に分布していればいいわけですけれども、非常に地域間格差があると。
 次のページを見ていただければと思いますが、都道府県別人口十万人に対しての回復期リハ病床数になります。全国平均が人口十万当たりこの時点で二十三床になりますが、五十床、目標を超えていますのが高知県と山梨県と鹿児島県だけと。熊本は福岡に次いで五番目で三十九床。これはなぜかといいますと、地方に回復期リハ病棟は熊本はないわけです。一方、滋賀、神奈川、茨城、新潟、東京、千葉、私たち地方からしますと、都会ほど回復期の病棟がない、ドクターが集中している都会ほどリハ資源がない、非常に逆転した現象があります。
 次を見ていただきますと、これはPT、OT、STの国家資格保持者の推移数です。爆発的に増えていまして、高齢化社会を迎えまして、やはりリハビリテーションが非常に重要だというところでこのような非常に貴重な人材が育ってきているということがありますが、次のページを見ていただきますと、これは日本リハビリテーション医学会のリハビリテーション科専門医、実は今年の四月二十二日の時点で千二百五十六名しかいません。非常にリハスタッフが増えている中で、この方たちを統括して患者さんに在宅を含めて高濃度のリハビリをやっていく、そのいわゆるコンダクター、指揮者に当たる方が非常に少ないんですね。例えば福井県は五人しかいない。五人で県全体やれますかということになって、非常に地域間格差が大きいということ、あるいは科によって差があるということです。ちなみに、日本脳神経外科学会の専門医が六千名、日本神経学会の専門医が四千人いるわけですけども、これでも足りないという現状であります。
 最後に、地域完結の中でやはり一番重要なのは予防だと思います。今回の論議の中で予防ということが非常にウエートを置かれていると思いますが、私が一生懸命この一年間で作った図を提示しておりますが、実は脳卒中というのはステージ四、四段階になります。ところが、心房細動、虚血性心疾患、大動脈瘤、心疾患が脳梗塞の原因になりますので、実は脳卒中は四・五段階、行き着くところは寝たきりあるいは認知症というところで、非常に私たちは厳しいところでできるだけ要介護状態にならないようにしているわけですけれども、なかなかそれがうまくいかない。一度起こしてしまわれますと、その後の人生非常に厳しいものがあります。是非予防にもっと力を入れていただきたい。
 私、個人的な意見としましては、禁煙対策をもうちょっとしっかりしていただきたいと思っております。例えば、病院とか学校とか公的な施設のやはり敷地内禁煙というのを徹底化していただいて、予防に力を入れているんだということをしっかり国としても提示をしていただければと思います。  最後に、実は今大学病院が非常に元気がなくなってきております。やはり診療、教育、研究、この三本柱で日本の医療を引っ張っています大学病院というのが、収益に追われて、もう研究どころではない、教育どころではないというような形になっておりまして、大学の先生の元気がなくなるとやはり地域全体の医療も元気がなくなるんじゃないかなと思いまして、是非大学病院が元気が出るような、そのような施策をやっていただきたいと思います。
 それと、やはり熊本の医療がある程度のことができるというのはそれなりの医療費が掛かっているという実は背景があります。やはり費用対効果ということも考えていただいて、患者、家族満足度とともに医療従事者、かつ、もちろん今後の医療体制の維持ができるような形で審議していただければと思います。
 以上です。どうも御清聴ありがとうございました。
○委員長(山下英利君) ありがとうございました。
 次に、対馬参考人にお願いをいたします。対馬参考人。
○参考人(対馬忠明君) 健保連の対馬でございます。
 まず最初に、健保連、健保組合の意見を申し述べる機会を与えていただいたことに対しましてお礼を申し上げたいというふうに思います。
 資料、大変恐縮ですがございませんので、口頭で失礼させていただきたいというふうに思います。
 健保連は、かねてから、国民の安心につながる真に公平で合理的な医療制度の構築を求めて改革の早期実現を主張してきたところでございます。今回、改革関連法案が提出されて審議が進められているわけですけれども、こうした私どもの長年の要請にこたえるものでございまして、委員長を始め委員の先生方、また関係者の皆様の御尽力に敬意を表したいと思います。
 このたび審議いただいている法案についてですけれども、少子高齢化社会が本格化する中で、国民皆保険を維持して、安定した医療の確保につながる医療費の適正化、新たな高齢者医療制度の創設、こういったものをその内容としているわけでございます。私どもは、この法案が我々の主張する医療制度改革の実現に向けた大きな一歩として賛成したいということでございますし、また建設的な立場、視点に立って更に実効性を高めるためには一体どうしたらいいのか、懸念、危惧される点はどういった点があるのかということについて意見陳述をしてまいりたいというふうに思います。  法案の内容について意見を申し上げる前に、私どもの置かれている状況がどうであるか、これは十分御理解賜っているとは思いますけれども、私どもの意見の基盤とか背景でございますので、簡単に申し上げさしていただきたいと思います。
 十年前、平成八年度、健保組合は千八百十五ございました。今、足下では千五百四十七、私どもの仲間が二百六十八組合減少しております。いわゆる自主解散に追い込まれた組合がそのうち半分、それから残りの半分が事業主サイドの再編統合、こういった理由でございます。  何ゆえに解散せざるを得ないのかと。経営努力の不足だと、ないしは現役の組合員の医療費負担に耐え切れないんだということであるんであればまだあきらめも付くわけですけれども、そうではございません。主たる原因は、健保組合のコントロールのらち外にあります老人保健拠出金などの拠出金でございます。保険料として集めたうち拠出金として供出せざるを得ない比率ですけれども、ここ数年四割前後。つまり、現役のためには保険料の六割でやっているというのが現実でございます。
 私ども健保組合というのは、自主自立、自己責任、こういった民間組織でございまして、厳しい状況の中でも何としても道を切り開いていきたいとこれまでも保険者機能を発揮して効率的な運営に努めてきたところでございますけれども、やはりこれには一定の限界がございます。今後とも、汗もかき、知恵も出し、先頭切って課せられた使命を果たしていきたいというふうに思ってございますので、懸命に努力した健保組合、こういった組合が解散ということに追い込まれることのない、また健康保険組合制度、これが危殆に瀕することのない、そのような制度、仕組みづくりへの御理解と御尽力をどうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。
 さて、法案の中身でございます。
 先ほども申し上げましたけれども、私どもの主張する改革の実現に向けた大きな一歩だということで基本的に評価しているところでございます。
 以下、三点ほど評価している内容について申し上げたいというふうに思います。
 一点目は、医療費適正化を推進する施策についてでございます。
 これまでの制度改革というのは、ややもしますと、掛かった医療費、これについてだれが一体負担するのかという議論になりがちだったわけでございますけれども、今回は、診療報酬をまずは引き下げる、さらには予防を重視した生活習慣病対策も行う、それから療養病床転換を含む長期入院の是正に目を向けていく、言ってみますと正攻法で取り組んでいくという考え方に立っていることは高く評価したいというふうに思います。
 生活習慣病の予防については、健診などの義務付けに伴う実施体制の問題、費用の問題、こういったことを含めまして、具体的な施策、手法はこれから詰めていくということが多いんだろうというふうに思いますけれども、私どもも健康の確保が何よりも重要であるという基本コンセプト、これはしっかりと評価、認識しまして、一大国民運動の一翼を担って精一杯取り組んでまいりたいというふうに思います。
 二点目の評価項目でございます。新たな高齢者医療制度の創設でございます。
 運営主体、それから給付と負担の関係、これが従来に比べまして明確化されたこと、これについては評価したいと思います。特に、今後、人口構成に占める後期高齢者と現役世代の比率が変化していくわけですけれども、それに対応しまして負担割合を変えていく、こういった仕組みを設けることについては、制度の持続安定性の観点から高く評価したいと思います。
 なお、患者の一部負担でございますけれども、一定所得者、これは高齢者ですが、三割負担、さらに七十歳から七十四歳者の二割負担、これにつきましては、高齢者医療制度を支える現役世代、若年者の納得を得るためにもやむを得ないのではないかというふうに思うところです。  このように、高齢者医療制度につきましては評価できる、ないしはやむを得ないと考えられる事項もあるわけですけれども、また懸念される事項もございまして、この点は後ほど申し述べたいというふうに思います。
 三点目の評価項目でございます。これは直接法案そのものとは言えないかもしれませんけれども、基盤を成す、ないしは関連するということで大変重要だと思っていますのは、医療・医療情報の透明化、IT化の視点が強くうかがわれるということでございます。いわゆる大綱を受けまして、既に医療費の内容の分かる領収書の発行でありますとかレセプトオンライン化などについては具体化されつつあるわけですけれども、私どもも患者の選択に資する情報提供、データ分析等にしっかり取り組んでまいりたいと思ってございます。
 次に、私ども保険者の関心が高くて、国民的にも極めて重要である新たな高齢者医療制度を中心に、懸念、危惧されることについて申し述べたいと思います。
 新たな高齢者医療制度は、申すまでもなく、七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度、それから六十五歳から七十四歳までの前期高齢者の医療費に係る財政調整制度の創設、さらには六十五歳未満の退職者についての、これは経過措置でありますけれども、退職者医療制度、こういった構成になっているというふうに認識してございます。
 確かに、増嵩する老人医療費、厳しい財政状況、公平性の確保、さらにはこれまでの論議、制度の経緯などなど、様々な制約条件の中でシンプルな制度設計というのがなかなか困難であるという事情は承知していますけれども、今回の制度は余りに複雑で、国民的な理解がなかなか行き届かないのではないかと思います。
 この問題に関連して、三点ほど要望を含めて申し述べたく思います。
 一点目は、支援金などの位置付け、性格の明確化と負担の公平性についてです。
 高齢者医療制度を安定的に運営していくためには、制度を支える現役世代に高齢者のための負担について理解、納得をいただくことが必要不可欠でございます。制度が複雑であればなおさらのこと丁寧な説明が必要でありまして、私ども保険者の説明責任も問われることになります。
 そのためには、次の三つの事項について御検討いただければというふうに思います。
 一つは、支援金、納付金、こういったものの位置付け、性格を明確化することが必要だと思います。特定保険料として法律上明定されることなどの評価できる点はありますけれども、一体何がこれまでの拠出金と違うんだろうか、論議を深めて明確化していただきたいと思います。  二つには、健保組合などの保険者の負担が過度にならないようなきめ細かい対策が必要です。政省令を含めた制度的な対応や予算面での支援措置などを含めまして、運用面でも是非配慮いただきたいと思う次第です。
 三つには、費用負担者の意見が反映できる仕組みを設ける必要がございます。保険者協議会の活用を中心に御検討いただいているようですけれども、その対応のみで十分なのかどうか。介護保険でいいますと介護保険事業運営懇談会というのがございます。こういった仕組みも参考にして議論を深めていただければというふうに思います。
 二点目の問題点、懸念されるところですけれども、制度の持続安定性と安定した医療の確保についてです。
 今回、将来にわたって医療保険制度を持続可能なものとしていくということでございますし、その内容、方向性も評価しているわけでございます。また、審議の中で数字なども含めまして一部明確にされつつあるということも事実でございます。
 ただ、私も健保組合を預かった立場だったわけですけれども、実際の責任者の立場から見ますと、一体自分の健保は新しい医療制度で財政がどうなるんだろうか、一体どういう数値を基にどういった計算をしたら自分たちの将来像が把握できるんだろうかという多くの声や悩みがあるのも事実でございます。複雑な制度であるだけに、医療保険制度ごとに将来どういった位置付けになるのか、その基礎数値を含めてできるだけオープンにして議論を深めていただきたいというふうに思います。療養病床の転換についても、影響が広範であるだけに、今後、費用負担の問題を含め、実効ある施策を具体的に詰めていく必要があろうかというふうに思います。
 三点目、これは高齢者医療制度の見直し規定についてでございます。
 附則の第二条、これは健康保険法等の一部を改正する法律でありますけれども、施行後五年をめどとして高齢者医療制度全般に関して検討が加えられ、必要があるときには所要の措置を講ずるべきとされています。
 先ほど申し上げました一点目、二点目について十分御審議いただきまして内容の明確化、必要な対策を取られたとしましても、複雑な制度を変えていくことでありますとか分かりやすくしていく、こういった意味ではおのずと限界があるのではないかというふうに思います。見直し規定は制度の枠組みそのものに目を向けて取り組もうとするもので高く評価するところですけれども、高齢化が急速に進んでスピードが問われる時代、こういった時代にあって五年間というのは長過ぎるのではないでしょうか。税制改革論議などとの関係もあって、早くに検討して実施していく必要があるというふうに思います。
 また、見直しに当たりましては、複雑な制度を極力分かりやすい制度、例えば七十五歳以上の後期高齢者の制度、これを六十五歳まで引き下げて前期高齢者も吸収するといったことを含めて検討する必要があるのではないかと思料するところです。
 最後になりますけれども、私ども健保連、健保組合、今回の医療制度改革に当たって、難しい時代、難しい局面であればこそ、これまで以上に公法人としての使命と責任を深く自覚して改革の一翼を担ってまいりたい、国民の健康と安心を将来にわたって確保していきたいと強く決意しているところです。
 法案の審議に当たりましては、十分議論を尽くされ、必要な附帯決議や政省令事項での対応、さらには予算措置等の運用面での配慮も視野に置いたきめ細かい実効の上がる対応を再度お願いして、意見陳述を終わります。
 ありがとうございました。
○委員長(山下英利君) ありがとうございました。
 次に、横山参考人にお願いをいたします。横山参考人。
○参考人(横山壽一君) 金沢大学の横山でございます。意見陳述の機会を与えていただいたことに感謝いたします。
 私は、社会保障論というテーマで研究を取り組んできました。社会保障を人権保障の制度的担保として位置付けて、その制度の在り方について考えてきました。その立場から、本法案で提案をされている中身を、社会保障の制度としての在り方、この点に焦点を当てて、提案をされている内容について意見を述べさせていただきます。
 社会保障制度の在り方という点で是非とも検討が必要な項目として三点挙げさせていただき、その三点についてそれぞれ意見を述べさせていただきます。一つは患者負担の引上げの問題であります。二つ目は高齢者医療制度の創設についてであります。そして、三点は混合診療の問題であります。  まず最初に、患者負担の引上げの問題についてであります。
 本法案の中で最も重要な見直しをされている中身は、やはり患者負担の引上げにかかわる内容だというふうに考えることができます。具体的には、七十歳以上の現役並み所得者の窓口負担を二割から三割へ引き上げる提案、七十歳以上の長期入院患者の食費や居住費の自己負担の問題、そして高額療養費制度の自己負担限度額の引上げの問題、さらには七十歳から七十四歳の窓口負担を一割から二割へと引き上げていく問題であります。制度設計に当たってこの負担をどのように位置付け考えるのかというのは、極めてこの制度の在り方そのものにかかわる重要な点であります。
 私は、今回提案をされた患者負担の引上げの内容は、以下の四点から社会保障制度として大変重大な問題を持っており、改革の妥当性を認めることができないという意見を持っております。
 その第一点でありますが、負担の中心であります高齢者世帯の家計が持つ特有の困難さ、この点が配慮されていないという点であります。社会保障制度の基本的な役割は生活の安心を確保するということにあるというふうに言っていいと思いますが、それとは逆に、今回のこの改正は高齢者世帯に計り知れない不安をもたらす、そういう中身であるというふうに考えざるを得ません。
 高齢者世帯が現役世帯の家計と違う幾つかの点がございますが、一つは、これから何年先まで暮らすことができるか、あるいは暮らさねばならないのかという将来の予測がなかなか難しいということもあり、今後も生活を維持できるかどうかということについて絶えず不安を抱えざるを得ないという点がその一つであります。
 二つ目は、収入を増やすことが大変難しく、支出増に対して弾力的に対応する能力に限界があるということであります。もちろん、高齢者世帯にも大きな格差がございますので一様ではございませんが、とりわけ収入の低い層、しかも年金収入だけに依存をしている層はそうした特徴が顕著に現れているというふうに言えるかと思います。
 実際に、高齢者世帯の約四割が年収二百万円以下、約三割が貯蓄二百万円以下、そして年金のみが収入となっている世帯が六四%、そして年金受給者全体の六四%が月五万円以下という現状を考えますと、こうした層が決して一部の層ではなくて、広範囲に存在しているということを考えることができます。その中で、年々生活費への支出で減少していく貯蓄に不安を抱きながら生活をする高齢者世帯が少なくないというふうに考えざるを得ません。
 一つだけ三ページ目に資料を付けさせていただきました。国民生活基礎調査からの表でございますが、貯蓄の増減状況を見たものと、その貯蓄の減少別に見た高齢者世帯の割合についてであります。貯蓄が減ったと答えた世帯が全体の高齢者世帯の四割、そしてその七割は日常の生活費への支出として取り崩されているということでございます。生活費に回るということでありますから、日常的に取崩しを行っていかざるを得ないという状況でありますから、金額としても五十万から百万。こうした金額は年々減少していくというふうな現状があるということでありまして、そうした点から、絶えず不安を抱きながら、先行き見通しがなかなか持てない状況の中で生活を余儀なくされるという面を見ておく必要があるということだと思います。
この点を踏まえてこの高齢者の負担の問題、これは医療だけではございませんが、検討をしなければならないというふうに考えます。
 第二点は、今の点とかかわりますが、社会保障制度において負担を検討する際に最も注意を払わなければならないのは、その改正によって制度の利用を妨げないということだというふうに考えますが、深刻な今回のこの改正は受診抑制を招きかねない。つまり、先ほど述べた高齢者の特有の家計の困難さということを前提にして考えれば、負担が実際に二倍や三倍となるケースを考えれば、受診の抑制を招くというふうなことはかなり高い確率で予測をせざるを得ない状況があるということであります。
 第三点は、今回様々な側面から負担の引上げが提起をされておりますが、そうした複数の負担の見直し及び他の制度による負担増が複合してもたらす最終的な影響について検討が果たして十分にされているかどうかという点であります。その点で、負担増の影響に対する軽視と最低生活をきちっと保障していくという視点が必ずしも十分に維持されていないのではないかというふうに考えざるを得ません。
 今回の改正は、先ほど触れましたように、窓口負担の引上げ、高額療養費の限度額の引上げ、加えて税制改正による所得ランクの変更というふうな影響、さらには既に上がってしまっている介護保険料の引上げ、こうしたことが複合的に作用するという点を配慮しなければならない。それらを総合して負担の実態を明らかにして、その是非を問う必要があるというふうに考えますが、その点での検討が決定的に不足をしているというふうに考えざるを得ません。したがって、負担増によって最低生活保障、直接には例えば生活保護基準が考えられますが、それを下回るようなケースが生ずるということも考えられますが、そうした負担への影響という点が必ずしも十分に配慮されていないのではないかというふうに考えざるを得ないということであります。
 第四点は、社会保障制度の持つ本来的な役割、機能がいわゆる定率負担、これは応益負担というふうに言っていいと思いますが、を広げることによって大きく損なわれつつあるということについての自覚が必ずしも十分ではないのではないかという点であります。その点で制度設計として致命的な欠陥を指摘をせざるを得ません。
 社会保障制度は、負担と受益、制度の利用とを直接リンクをさせない仕組み、いわゆる負担は能力に応じて、利用は必要に応じてというルールを作ることで、いわゆる所得の再分配を行って、当初所得の格差を分配所得の段階で改善をする平等化の役割というのを担ってきました。定率負担の導入とその拡大は、負担と受益をリンクをさせる、言わば使った量に応じて負担をするという方式でありますから、その方式が持ち込まれ広げられていくということは、こうした所得の再分配を通じた平等化を担っていく社会保障の役割、機能というものを低下をさせ、逆に格差を拡大をしていく方向へと作用していくというふうに考えざるを得ません。その意味で、社会保障制度の基本原則と衝突する内容を持っており、やはり制度的に大変大きな問題を持っているというふうに言えるかと思います。
 次、第二点でございますが、高齢者医療制度についてであります。
 今回のこの改正で七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度の創設という大変重要な制度設計の見直しが提起をされておりますが、以下の点で大変大きな疑問を持っております。
 第一は、社会保険の制度設計の側面から見て本当に適切なのかという点であります。原則的な見地を述べれば、制度の安定性を高めるためにも大数法則が十分に働くよう保険集団をできるだけ大きくするということが望ましい。したがって、保険リスクを分散させることでリスクの対応力を高めるというのが制度設計の通常のスタイル、考え方であります。ところが、高齢者医療制度は保険リスクの高い後期高齢者に限定して制度を創設するということでありますから、制度設計に大変重大な疑問を持たざるを得ません。
 第二は、制度の分立がもたらす制度間格差の拡大への懸念であります。保険制度の分立が制度間格差を不可避的に生み出さざるを得ないということはこれまでの歴史が教えるところであります。不十分さを持ちながらも制度間の格差を是正をしていくということは、戦後の社会保障の歩みの中では大変重要なテーマの一つでありました。にもかかわらず、なぜ今あえて制度の分立を進めるのかという点で、この点でもやはり制度設計として大変大きな疑問を持たざるを得ません。
 最後、第三点目でありますが、混合診療についてであります。
 医療保険制度における新たな原則として、混合診療の実質的な解禁というふうに言われておりますが、が提起をされています。具体的には保険外併用療養費の導入ということでありますが、この点について重大な問題を有しているというふうに考えます。
 第一は、社会保障制度の持つ最も重要な原則の一つである、先ほど触れた平等化と真っ向から衝突するということであります。
 既に述べましたように、負担能力の違いで利用に格差をもたらさない、医療でいえば負担能力の違いで受けることができる医療に違いを生まないというのが大原則であります。しかし、今次の改正は、従来の特定療養費制度における対象に加えて、必ずしも高度先進でない技術や保険の利く回数を超える医療行為など、通常の診療のレベルの拡大をしようとしています。こうした措置が医療における負担能力による格差をもたらすことは明らかであります。
 第二は、民間医療保険の拡大を促して、そのことが公的医療保険の後退をもたらす可能性が小さくないと考えるからであります。自費診療の拡大は、民間医療保険に対するニーズを高めずにはおきません。問題は、一たび民間医療保険が広がり始めるや、官が民の発展を妨げないとの論理の下で、民間医療保険の存在と促進を理由にして公的医療保険の見直しへと連動していくということが懸念される。その点で、そのことが医療における格差を拡大させるという点も含めて、大きな疑問を持たざるを得ません。
 以上の点から、この法案はいったん廃案とし、高齢化に対応した新しい医療制度の在り方について徹底した国民的な議論を求めるものでございます。
 時間をオーバーして申し訳ありません。以上でございます。
○委員長(山下英利君) ありがとうございました。
 次に、村山参考人にお願いをいたします。村山参考人。
○参考人(村山正栄君) ただいま御紹介いただきました、日本赤十字労働組合で本部の書記長をやっています村山といいます。
 私は、三十年ほど、新潟の中核病院の長岡赤十字病院という、七百三十六床の三次救急を受けている病院で放射線技師をしていたわけですけれども、八年前に東京に日本赤十字労働組合の専従として出てきて、現在までに、この八年間の間に全国の日赤を始めとする多くの病院を回って、院長さん、それから事務長さん、職員、それから労働組合の皆さんのいろんな意見を伺って生活をしてきたというのが私の立場であります。そういう中で、今回このような機会を与えていただきまして感謝しております。
 それで、日ごろ感じていることを、医療の提供する側と受ける側の両方の意見を私なりに述べさせていただきたいというふうに思っています。  私の作ったレジュメが四ページであると思うんですけれども、実は話をいただいたときにどういうふうにというふうに思ったわけですけれども、三つにまとめてみました。
 一つは、今の医療現場、病院医療の現状を書きました。ここに?から?まで、特に?まであるわけですけれども、非常に今医療の現場は荒廃しているというふうに思われます。その中で、ここだけを話していると非常に長くなるわけなんで、最後の三のところを中心にして話をするつもりですけれども、医療現場の職員は非常に今疲労こんぱいしていますし、この前の医師の逮捕の事件を始めとして非常に萎縮をして、労働意欲、モチベーションが非常に低下しているというのが今の現状だというふうに思います。
 その中で、医療施設の経営の悪化が進んでいるということで、今私たちが医療現場で求められているのは、人材の育成と職員の意識の高揚の実現が最大のテーマではないかというふうに思っています。医療現場の労働条件の改善が、患者にとっても医療現場の職員にとっても経営戦略としても重要なのではないかというのは、私は思っています。
 一の問題については、ここに資料で、医療過誤問題について、?のところの資料として、私たちの仲間が作った「無過失賠償制度の導入をめざして」という資料を参考にしていただければ有り難いなというふうに思っていますし、六月二日のときにそういう話が出たのではないかというふうに思っています。それから、医療職場の暴力とセクハラの問題についても、そこに資料を出しまして、ILO等の関係で、この五ページに書いてありますけれども、医療職場の暴力は、全体の職場の二五%が医療職場で起きているというふうに言われているぐらい、今医療の現場は非常に荒廃しているということをまず話をしていかなければならないというふうに思っています。
 それから、二番目の診療報酬の影響なんですけれども、ここは前の先生方がいろいろおっしゃっているわけですけれども、二ページのところを見ていただくと、私は私なりにこの診療報酬の改定は、よく読んでみると、もう病院にはできるだけ来ないでね、医療費、国庫負担が掛かるから、来たらできるだけ早く退院して地域に帰ってほしいと、こういうふうに読み取れるわけです。しかし、患者さんは入院したときから病院サイドから次に行く場所を探すようにというふうに促されています。現実に後方病院又は施設を見付け出すことは非常に困難であります。
 今、多くの病院の看護師長さんは、次の場所を探してねということを言うのが仕事のように、今の一般病床の中で十七日とか十九日とか、それぞれ在院日数の関係があるわけですから、次の場所を探さなければならない。そのために患者さんに、あなた探してねと、こういうふうに言うのが仕事になっています。
 今回の診療報酬、介護報酬は、まず最初に、医療の質をどうするかではなく、国の負担と患者の負担増をどうするかということで、財政面だけが前面に出てきたように思われてなりません。医療職場の人材を含め、量が必要であり、そのためにはそれを裏付ける財源が必要だというふうに私は思っています。医療費は私は豊かさの指標だと思っていますので、今それを放棄しようとするのではないだろうかと危惧しているところであります。今回の改定は大きくかじを取ったのかなというふうに思っているところであります。
 それで、今日の問題の医療制度改革関連法案についてなんですけれども、ここについては、どういう考え方があるのかということで、三ページ以降、私の方では書きました。
 一つは、健康保険法の改正は予算関連法案で、医療法の改正は予算非関連法案であるのに、これを一括して審議することについては非常に無理があるだろうというふうに思っています。そして、十二法すべて一括というのは、いかにもこれを通すためにだけというふうに思われてなりませんので、それぞれ分けて審議すべきだというのが私の考え方です。
 それから、医療保険者に対して、現在の老人保健法で四十歳から医療以外の保健、ヘルス事業を受け継ぐ形になって、四十歳以上の被保険者等を対象とする糖尿病等の予防に着目した健診、指導義務付けの実施の方法については、どういうふうな財源又はどのようにして行うのかということが検討されるべきではないのかというふうに思っています。
 それから、退職後の任意継続の被保険者の制度の問題なんですけど、出産手当金と傷病手当金を打ち切るというふうになっていますけれども、これについては多くの問題があって反対をしたいというふうに思っています。
 それから、健康保険法の改正なんですけれども、これを三つに分けてきているわけですけれども、なぜ七十五歳というところで分けなければならないのかというところが私たちには分かりません。それを、運営を都道府県単位で行い、市町村が加入する広域連合で行おうということになっているわけですけれども、責任の主体が不明確なので、今回提案されている新たな高齢者医療制度は撤廃し、検討し、見直すべきだろうというふうに私は思っています。
 今、テレビの中では毎日のように、五十歳から入れますというテレビコマーシャルが流れていますけれども、あれは年を取ったら公的保険で見ませんと政府がメッセージを出しているように私には思えてなりません。弱者が医療に掛かることができないというような社会になってほしくないという意味で、ここは十分考えていただきたいということを話をしたいというふうに思っています。
 それから、混合診療についても反対です。今でさえ基礎年金受給だけの高齢者は、昨年の十月に介護保険でホテルコストが入って、約そこで三万から四万取られ、介護保険制度で一割を負担すると、ほとんど暮らせていくことができないという現状になっているわけです。そうすると、今、国保、三割が加入できないと。
 そして、今病院から言われている、僕もある事務長さんから言われたわけですけれども、非常に未収金が増えてきて、病院として強制的に取り立てるということがなかなか難しいと。そういうことも含めて、病院の経営が圧迫されてきているので、この辺は十分考えてほしいということぐらいは言ってほしいということだったので、意見を述べさしていただきたいというふうに思っています。
 それから、患者への医療情報の提供は当然必要だというふうに私は思いますけれども、医療従事者の個人情報保護に対しては、全く現状では医療現場ではされていないと。今多くの、まあ多くとは言いませんけど、看護師さんは、私たちが今医療の現場にいると、ここに名前を付けて、だれだれが今日診察をし、だれだれが何々を撮影をし、だれだれが担当ですというふうにしていますけれども、それを見て、医療現場ではストーカーされたり暴力やセクハラ等の問題が起きています。こういう問題をどうするのかという指針をきちんと出すべきではないのかというふうに思っています。
 とりわけ看護職場の看護労働については、現状としては、病院に就職した新人看護婦の離職率が九・三%という現状です。十一人に一人が辞めていくというような形の今の看護職場を是非改善するためにも、日本もILOの百四十九号条約について批准に向けての法整備を是非お願いしたいというふうに思っています。
 それから、医療の機能分化と連帯は当然必要だと思われます。そのために体制づくりの方向性をきちんと示すことが医療と介護の両面からも必要だというふうに思っています。
 医師不足の問題については、特に地域偏在、それから研修医制度等の問題があると思うんですけれども、国民的な課題だというふうに思っています。特効薬はないと思いますけれども、多方面からの検討が必要だというふうに思っています。  それから、医療安全の確保は当然でありますけれども、しかし、今、私たちが現場で話を聞いているところでは、病院が必死になってそのことを行ったとしても、もう限界に来ています。国としての財源措置をここできちんとやらないと安全が失われてしまうというふうに思っていますので、この辺についても十分検討する必要があるのであろうというふうに思っています。
 それから、医療従事者の資質の向上についてなんですけれども、各施設では努力をしているんですけれども、どうしても、この前の医療事故の問題、それから医師の逮捕の問題、業務上過失で医師法二十一条の異状死の届出の義務違反等がありまして、これらの問題については、医療従事者が萎縮している現状を踏まえて、患者側からも医師側からも利用できる、すべての医療事故を審査できる専門家による第三者機関を創設すべきであるというふうに思っています。
 医療法人の制度改革は、多くの病院で関心を持っているところであると思いますけれども、社会医療法人を出資額限定方式の社団医療法人に変えたときに、国、自治体、公的病院が担ってきた政策医療、救急とかへき地医療について、この部分が切り捨てられてくるのではないかなという危惧を抱いているところであります。
 まとめとしてなんですけれども、今回の医療制度改革関連法案についての改正案は、多くの課題、特に提供する側の体制づくり、人材確保、財源などどうするのか、また受ける側として制度をどのように理解し、負担増についてどう考えるのか、多くの問題を抱えているわけですので、十分な議論を尽くされた方がいいのではないか。できれば時間を掛けて議論し、国民の理解を得るまで努力をする必要があると思いまして、まだ不十分だというふうに思っています。
 医療現場では、患者さんは負担増になったんだから当然より良い医療を望みますが、提供する側は、医療の安全、安心の提供には限界があるというふうに感じています。医療従事者を含めた医師不足と経営難で不採算医療、NICUとかICU、三次救急という問題について、最後まで残ったところが最後までやらなければいけないという形になっています。僕は新潟なんですけど、新潟においても、NICUはもうできるだけだれも取らないというところで、うちの病院だけがもう必死になって受けているけれども、職員はもう疲れ切っているという現状になっています。
 このままでは国民皆保険制度が崩壊する危険に直面していることを政府は認識すべきではないでしょうか。
 医療の質を上げるために、財源確保を含め検討しなければならないときであるということを強く主張したいと思います。そして、お金のない人が医療に十分掛かれないようなシステムには決してしてほしくないというふうに思っています。そのために、十分な議論の中で方向性を出してほしいということが私の願いであり、意見であります。
 どうも御清聴ありがとうございました。
○委員長(山下英利君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑の時間は限られておりますので、参考人の方々には簡潔な御答弁をよろしくお願い申し上げます。
 また、委員長の指名を受けてから御発言をいただくようにお願いいたします。
 それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
○足立信也君 お忙しいところありがとうございます。
 私は、民主党で医療改革作業チームの事務局長をやっております足立信也といいます。よろしくお願いします。
 順番にまず一問ずつ質問をしたいと、そのように思っております。
 まず竹嶋先生にお伺いしたいんですが、予防医療、そして保健の重要性、これを強調されていたと思います。それから、かかりつけ医がゲートキーパーとしての役割が非常に大事なんだと。これはおっしゃるとおりだと思います。今法案でやはり保健医療というものの重要性をうたっておるんですが、私は、ゲートキーパーという役割からいくと、やはり待っている姿勢が強い。健診でピックアップされた患者さん、あるいは患者さんという前の段階の方も、待ち受けているという感じがあるんですね。長野モデルのいいところは、やはり医師、保健師が地域へ出て、ボランティアの方々と手を携えながら地域へ出ていった、この試み、モデルが私は成功したんだと思っております。
 そこで、保健医療におけるゲートキーパーあるいはかかりつけ医の役割という形で、お考えをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
○参考人(竹嶋康弘君) 私の言葉のゲートキーパーの意味をそういうふうにお取りいただいたわけですが、要するにかかりつけ医というのは、一番地域にありまして、今おっしゃったように、患者さんだけじゃなくて、患者さんの背後におる家族の方、そういう方々も含めまして、その周囲の方々も一緒に見させていただこうということですから、今御指摘のあったような健康づくりですね、あるいは健診、これは当然もう地域でやっているわけです、これは。これをやっていくということでは我々異存はないので、我々日本医師会ももう一昨年からそういう糖尿病を中心とした生活習慣病の予防のそういうプロジェクトもつくっていますし、実際にやっています。
 だから、それをやるのが、やはり、私、冒頭申しましたように、自分の基調のところで、基調講演で申しましたように、お話し申しましたように、やっぱり大病院ではなかなか難しいから、やっぱりかかりつけ医、診療所の医師とか、それから中小病院ですね、そういう方々、特に地域におっては、言っては中小病院しか本当はないんです、大きな病院は。だから、そういう方々が、先生がおっしゃるように、やっぱり保健、健康づくりということに取り組んでいくということは全く異存がありません。
○足立信也君 ありがとうございます。
 それでは、橋本先生にお伺いいたします。
 まず、今の竹嶋先生のお話からあるように、その次の段階の急性期病院、それから元々は大学病院におられたということなんですけれども、今短期的な医師不足解消のために集約化ということが叫ばれております。小児科、産科を中心に言われているわけですけれども、もちろんその集約化された、むしろその中にいらっしゃる先生ということで、これは私は、言葉としてはそれは正しいんだろうが、実際に働いている人間として、今以上、これ以上の集約化がハードの面でも、つまりベッド数の面でもソフトの面でも、人員配置ですね、本当に可能だろうかと。今の診療報酬だけで従業員を雇っていくという体制でこれが可能かということを疑問を持っているんですが、現場ではどのようにお考えですか。
○参考人(橋本洋一郎君) これだけ診療報酬が厳しくなりますと、結局、新規にドクターが雇えない、一方でまた医師不足でもあるというところで、実際地方の中の中核の都市であってもドクター確保が難しくなってきてまして、なかなか今の現状で集約化というのは難しいのかなと。  特に、大学の医局制度が壊れていっていると。今までは医師の資質、あるいは質、あるいは地方の病院への派遣というのが大学の医局がやってきたわけですけれども、そこのところがコントロールがもうできない、ドクターがいなくてというところで、特に地方で大学の力が落ちていきますとそういうところに派遣ができない。じゃ、僕らが現場で医者探しをできるかというと、非常に難しいですね、日ごろの診療の中で消耗していますので。ですから、何らかのスーパーローテートが始まることによって講座制が壊れていく中で、何らかの医師確保、集約化をする手だてが何か出てこないことには、ただ講座制を壊すことだけに走っているんじゃないかなと思っていまして、僕は大学を出てもう十三年になりますが、やはり大学の力というのがある程度ないと地域全体の医療のコントロールができないんじゃないかなと思っていますけれども。
○足立信也君 じゃ、橋本先生、もう一問だけなんですが、禁煙対策のお話がございました。ハイリスクストラテジーとポピュレーションストラテジーという話をしてくるんですが、どうも間違っていると私は思っていまして、ハイリスクの人をピックアップしてそして教育をするというのは、これは無理な話なんですね。で、ポピュレーションアプローチ、ストラテジーでやるんであれば、これは買いにくい状況にするということが多くの国民を対象としたやり方だと私は思っていまして、そのためには、特に若年者の喫煙率を下げるためには、昨年暮れの成城大学のデータでもございましたが、倍近い値段のアップ、欧米並みになれば喫煙率は半分になるんじゃないか、特に若年者が減るんではないかというデータも出ておりますが、そのアプローチの仕方についていかがお考えですか。
○参考人(橋本洋一郎君) 中学生、高校生で覚えた味は一生忘れないというところで、禁煙を積極的にやっているドクターに話を聞きますと、もう小学校に教育に行かないと無理だと。大人になった人にどんなに禁煙を言っても駄目だということで、小学校に行かなきゃいけないというのが非常に今の日本の医療の厳しいところですので、一つは、やはりもう、嫌われますけど、一箱千円ぐらいにしていただくといいのかなと僕は思っています。それと、吸えないようにしていくと。喫煙ルームをつくるというのは駄目なんですね。もう敷地内禁煙化していくということで、特に学校の先生がたばこを吸っている、もうこれはけしからぬと僕は思うんですね。ドクターがたばこを吸っているんですね。
 ですから、まず地域全体でやっぱり予防ということを、NHKでもこの間やっていました、食事が偏ると。やはり子供のときから予防していくということを地域全体、学校の先生含めてやっていかないと僕は駄目だろうと思うんですね。
 以上です。
○足立信也君 お聞きの皆さんが誤解のないように言うんですが、ハイリスクストラテジーが今のやり方間違っていると私が言うのは、ハイリスクストラテジーというのは、ある集団の中でごく限られたリスクのある人たちにいて、それに対して明確な治療法がある場合にやっと通用する戦略なんですね。ということだけ言わさしていただきます。
 次に対馬参考人にお聞きしたいんですが、私、衆議院、それから参議院の参考人の意見陳述をお聞きして、一番明確に賛成の立場から発言なさったと思ってるんですね。で、ポイントが三つございました。医療費適正化に正面から向き合っている、それから高齢者医療制度を新たに創設するという考えであった、それから情報の透明化を図ったと。
 しかしながら、高齢者医療制度については多くの懸念を表明されました。そして、情報の透明化については、私は、やはりレセプト並みの内容の詳細なものが、患者さんが希望すればそれは医療機関として出して当然だろうと私は思っております。
 残るは、医療費適正化へ真正面から向かったということなんですが、保険者としての立場から、保険料を下げるべきだという考え方で医療費を抑制すべきという考え方でしょうか。それとも、例えばパチンコ産業三十兆円、日本の国民医療費三十二兆円、葬儀関係のお金は十五兆円というこの現状で、医療費そのものが高いから抑制すべきだ、そのどちらの考え、あるいはまた別のお考えでしょうか。
○参考人(対馬忠明君) 今の医療費を下げるべきだと、こういった議論をしているわけではなくて、これから医療費、今後の見通しにもよりますけれども、まあ二十八兆円が給付費ベースで二倍の五十六兆円になると。それを少しでも下げて四十八兆円と、こういうことですね。ですから、仮に四十八兆円に下げたとしても、二十兆円というのは増えていくわけですね。これは平成三十七年度になりましょうかね、二〇二五年。
 ということになりますと、今の二十八兆円の給付費が二十兆円増えるという、そのうちの過半以上は我々保険者、保険者というよりはむしろ保険料を担っていただいている事業主と若年者、主として若年者ですよね、の負担になるわけですから、それについてできるだけの効率化を図っていく。それでもって何とかして質を確保して、できればもっとより良い質のものをというのは保険者の願いとしては当然のことではないかなと、こういうふうに思うんですけれども。
○足立信也君 今やるべきことは質を変えていくことだという考えは全く同感でございます。
 続きまして、横山先生にお伺いいたします。
 私は経済学ということに関しては全く素人ですが、同じ経済学の宇沢弘文先生、私、尊敬しておりまして、彼の医療と教育は社会的共通資本であるという考えに大変賛同しております。そしてまた、今格差の問題を先生もおっしゃいましたが、やり直しが利けば、やり直しができるチャンスがあればある程度の格差はやむを得ないという論を持たれる方もいらっしゃいますが、医療や介護では一度付いた格差というものは取り返しが付かない、それが不幸を招くということなんですね。ですから、セーフティーネットの中でも最初の段階でできるだけ結果の不平等を招かないようなシステムをつくる必要があると、私はそう思っておりますが、その格差についての考え方をもう一度お伺いしたいと思います。
○参考人(横山壽一君) 基本的な考え方は足立議員とほぼ同じだというふうに言っていいかというふうに思います。
 特に、この社会保障制度の改革の中で、規制緩和を進めていくこの議論の中で、事前規制から事後的なチェックへと、こういうことが一つのスローガンとして提起をされて、とにかくその参入についてはできるだけ門戸を開いて競争を促進していく、競争を促進していけばその質が高まっていいものだけ残っていくと、こういうふうな議論がされてきましたけれども、介護についても医療についても競争が必ずしもその質を高めていくということにはならない。むしろ質を下げていく、そうした方向へも作用していく。つまり、実際のその競争は最終的にはコストをめぐる競争になっていきますから、対人サービスの領域では人件費をどれだけ下げることができるかというところに一つの焦点が当たってまいります。
 そういたしますと、実際に正規の職員をパートやアルバイトに置き換えていく、こうしたような対応が結局競争の中で避けられなくなってくるということになっていくわけでありまして、そうしたことが結果的にはサービスの質を低下をさせていくというふうなことにやっぱりつながっていかざるを得ないということだというふうに思います。
 同時に、その競争促進的な制度が進められていきますと、当然ながら負担能力のあるなしによって受けることができる医療のサービスや介護のサービスが、これが広がっていくということに当然なっていくわけであります。同じような条件で全く差を付けないサービスが行われていくのであれば競争の必要はないわけで、競争が叫ばれるということは、そうした自由選択の領域をできるだけ広げていくということとワンセットになっている。しかし、結果的にはそのことがやはりその質を、格差を今度広げていくということにならざるを得ないというふうに思います。
   〔委員長退席、理事岸宏一君着席〕
 おっしゃいましたように、ちょうど医療や介護が事後的なチェックで一度受けたサービスが取り戻しが付かないのと同じように、やはり競争の中で、一見すると選択の幅が広がっているように見えるけれども、それぞれが利用することができるサービスに格差が生まれていく状況の中では、やはり取り返しの付かない状況というのが全体として広がっていかざるを得ないというふうに考えます。
○足立信也君 村山参考人にお伺いいたします。
 どうもありがとうございました。
 日赤ということで、災害時あるいは海外へもかなり同僚の方がいらっしゃると思います。日本の救急患者をいかに医療機関へ搬送するかという考え方の中で、やはり私は救急車でも間に合わないものはドクターヘリ必要なんだろうと、これは思っております。
 ところが、今九県十機の配置ですね、ドクターヘリ。それから、現状では消防防災ヘリをそれに運用しているという形になっておりますが、搬送時間を第一に考えた場合に、消防防災ヘリを便宜上、患者さんの搬送にも空いているときは使っているというこの仕組みはやはり足りないんだろうと私は思っておりますが、そういった面の患者搬送あるいはヘリコプターの利用ということに関して、災害の場合と救急医療の場合、その点についてお考えがあったらお伺いしたいなと思ったんですが。
○参考人(村山正栄君) 一番問題なのは三次救急ないしは災害時の救急のことだというふうに思っているんですけれども、まず、直していただきたいのは、地方においては一次と二次と三次が一緒くたになってきていて、もうすべての病院が、三次を掲げたところは一次も二次もすべてそこに集まっていて、そこのすみ分けをきちんとやるということがまず必要なんだろうというふうに思っています。三次を受けたところがもうすべてを受けなければならないような状況をまず改善するにはどうしたらいいかというのは一点あるというふうに思っています。
 それから、救急災害については、私は当然ヘリを使ったり、うちの病院もヘリポートを近くに、十二階の病院ですけれども屋上には作れなくて河川敷に作ったんですけど、それは当然必要だろうというふうに思っています。特に、新潟県の場合は二次医療圏を十三圏域から今度七に変えるという形の中で、その中で魚沼地区だけが三次救急がないという今状況になっていますので、ここからするとやはりそういうことも必要になってくるんだろうというふうに思っていますので、できれば、まず最初の地方における一次、二次、三次のすみ分けを救急によってはやっていただきたいと。
 それからもう一つは、災害時のものについてはきちんと対応できるヘリということと、それからドクターを乗せるということをちゃんとやっていただけるシステムが必要なんではないかなというふうに思っています。
○足立信也君 最後に、竹嶋先生と橋本先生にもう一問だけお伺いしたいです。
 これは、衆議院の参考人で日本医師会の内田先生が、医師数は不足していないと、こういうふうにお答えになっている。それから、今地域の医療としては医師不足が非常に問題になったと先ほどお答えになった。それから、急性期病院では疲弊していて人が足りない、大学病院ではみんな元気がなくなっている。どこにも余っている、あるいは人が十分充足されているところはないような印象を私は持ちます。
   〔理事岸宏一君退席、委員長着席〕
 ですから、一言で結構なんですが、今、平成二十九年には三十万人の医師が誕生して、人口一億二千万だとすると十万人当たり二百五十人に、それ以降余るというふうに政府はお答えしているわけですが、医師は不足していますか。
○参考人(竹嶋康弘君) 一言ですか。
 私は、やっぱり最初申しました、地域性とか考えた場合は不足していると考えます。
○参考人(橋本洋一郎君) 看護師の免許を持っている方で働いてない人が一杯おられます。それと一緒に、やはり働いてないドクター、特に女性医師の場合はどうしてもある時期働けない環境があって、数は増えているけれども現場では足りないというのが実感であります。
 以上です。
○足立信也君 ありがとうございます。

060607厚生労働委員会会議録より
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